山内泰次さんは、会津若松市大町で「御蒔絵やまうち」を営む蒔絵師です。山内さんの手で描かれる繊細な草花の蒔絵にはファンが多く、遠方から買い求めに来てくださる方も多いとか。

 「実は、自分からやりたいと思って漆器の道に入ったわけではないんですよ。家庭の事情で地元に帰って来ざるをえなくなって、それで家業を継いで今の仕事を始めたんです。」

 そう話す山内さんは、会津に戻る前は東京で営業の仕事をしていました。職人であった祖父と、工業高校で漆を教えていた父親とを子供の頃から見ていたものの、それまで漆器の仕事をするとは思いもしなかったそうです。

 そうして会津に戻ってきた山内さんは、市内の工房で5年間の修行時代を過ごしました。

 「東京ではずっと営業の仕事でしたから大変でした。一日中座っているので、最初のうちは足が痛くなるし、膝に水が溜まったりもしました。」

 昔から漆に触れていたとはいえ、慣れない仕事に苦労する山内さん。最初の頃は、兄弟子たちとの力の差も大きく、不安を感じたりもしたそうです。

 「私が梅の花をひとつ書き終わって並べると、兄弟子はその間に20個くらいパッとできてるんですよ。こんなのでやっていけるのかな、と思いました。(笑)」